料理家の細川亜衣さんが熊本市・立田山のふもと、泰勝寺跡に越してこられたのは2009年のこと。元・僧坊を改装して理想のわが家をつくり、庭を愛おしみながら過ごしてきた日々。食のこと、器のこともあわせ、細川さんの暮らしぶりをお聞きしました。
細川さんのご自宅には立田山の自然と溶け合うような庭があります。梅や柿、無花果などの果樹が点在し、古来よりこの地に集った人々は、四季折々のおいしい恩恵にあずかってきました。最近はジューンベリーやスモモも仲間入り。細川さんが植えたものです。
早春、庭で収穫した金柑はジャムとなり、毎朝のトーストやヨーグルトに。初夏となり味がなじんだ金柑シロップは熊本のおいしい水で割って、庭のミントを添えて。庭で過ごしたくなったらテーブルを広げ、ご友人や娘さんとお茶の時間がはじまります。
素材とまっすぐに向き合い、塩とオイルでシンプルにおいしさを引き出していく細川さんの料理。背景や風土などの物語が添えられたレシピが共感を呼んできました。「ただ“本当の旬”を理解できたのは、熊本に来てからかもしれません」と細川さん。
「旬は真夏だと思っていたトマトやすいか。熊本に暮らしているうちに、一番おいしいのは春から初夏だということに気がつきました」。土地には土地の旬がある。それから"熊本の旬"を余すところなくいただくレシピが増え、素材の力をいっそう信じるようになったといいます。
旬を盛りつける器についてうかがうと「合理性と機能性を持ち合わせたものが好みです」と細川さん。そこには器も調理用具も食材も「理にかなった使い方をしたい」という想いがあります。食卓の定番は、洋食器のディナーセットや入れ子の器です。
入れ子といえば、細川さんが旅先の中国でよく目にしていた入れ子の食器セット。その使い勝手に着目し、陶芸家の寒川義雄さんと"五碗三皿"のシリーズを制作されています。
そんな細川さんに6つの器が入れ子になった「茅乃舎別誂え 応量器」を使っていただきました。
応量器を手に取り「ひとりの昼食が思い浮かびました」と細川さん。「おかずや漬物を少しずつ盛ったり、インド風や韓国風の使い方にもぴったりです。また、数種類のおやつを盛り付けてお茶の時間も。お皿が余れば茶こしの置き場に活用できます」と応量器をみんなで共用するスタイルも教えてくださいました。
「茅乃舎別誂え 応量器」に似合う朝食を細川さんに考案していただきました。取材にうかがったのは4月中旬。泰勝寺跡周辺で採れた筍、熊本では春に実るトマト、間引きされた小さなキュウリ、庭のハーブと旬まっさかりのおいしさです。
・ポテトサラダ
新じゃが芋を蒸した後に潰し、好みの量の酢と塩で和える。上記を皿に盛り、さっと火を通した旬のアスパラガスと豆類(スナップえんどう、絹さや、そら豆など)を添える。手作りマヨネーズをかけていただく。お皿の中で混ぜ合わせながら、各自で好みの味に調えられるのがポイント。
・にんじんとトマトのスープ
人参はピーラーでうすくそぐ。丸ごと冷凍したトマトを流水につけ皮むきを行う。鍋の底を覆うくらいの量の油(熊本県産菜種油)を入れ、好みの量の塩、人参、トマトを加え、鍋に蓋をして蒸し煮にする。ソースのように旨みが引き出されたらブレンダーで撹拌する。水分を多めに足すと写真のように泡立つ仕上がりに。スプーンは使わず、器を手に取り、お抹茶のように直接いただくスタイルがおすすめ。トマトは冷凍することで繊維が崩れて蒸し煮にした時、水分が出やすくなる。
・筍のマッシュの半熟卵のせ
生の筍は茹でた後カットし、30分程バターでじっくり炒め蒸しにする。マッシュした後、チーズと牛乳を加え、半熟ゆで卵を添えてパルミジャーノ・レッジャーノをかける。
煮込む時間も塩や油の分量もあえて決め込まない細川さんの献立。それはトマトとひとまとめに呼んでも品種や育った土地の風土で甘かったり、ずっしり重みがあったり、持ち味がいろいろだから。
旬の野菜の声を聞きながら、その時々でいちばんの“美味しい”を引き出していただけるとうれしいです。
1972年生まれ。料理家。
熊本 taishoji (https://www.taishoji.com/)にて、料理教室や展示会を主宰。国内外で食材や工芸作家の器を主題とした料理会も行っています。
著書に『料理集・定番』(アノニマスタジオ)、『旅と料理』(cccメディアハウス)、『taishoji cookbook 1・2』(晶文社)など。
2022年6月よりオンラインマガジン「エプロンとレシピ」(https://grembiuli-ricette.com)を開設。
応量器のご購入はこちら
https://www.kubara.jp/kayanoya/dougu/dougu/9723400/
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最新の情報は久原本家通販サイトにてご確認ください。
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原