
季節の仕込み仕事
「梅干し」
梅は日本の食卓に欠かせない食べ物のひとつです。今回は茅乃舎の店舗で梅干しのワークショップも行う定松千歌さんに基本の漬け方、さらに梅干しを使ったレシピを教わります。
梅雨入りの頃
梅仕込みが始まります
梅の実が収穫を迎え、店頭に並び始めるのは5月中旬頃から。
「梅干しは長期保存が可能で、梅酢や梅味噌は調味料代わりに重宝しますよ」と定松さん。毎年漬ければ1年目、2年目と塩の角が取れてゆく味わいの変化も楽しめます。

まずは青梅から
基本の漬け方
梅の実には硬めの青梅と赤黄色に色づいた完熟の実がありますが、初めての梅仕込みには扱いやすい青梅がおすすめです。

洗って、ヘタを外した実を塩漬けにします。まず片手で焼酎にくぐらせ、次に反対の手で塩をまぶし、一粒ずつ容器へ。まんべんなく塩をまぶすのがポイントです。

塩漬けの仕込みはここまで。材料も工程もとてもシンプルです。実から水分が出てくるので毎日容器を振って、7月下旬の土用干しを待ちましょう。
- 梅の漬け方
-
【用意するもの】
梅1kg、塩100g+50g(梅に対して15%)、焼酎(またはホワイトリカー)50ml
梅を入れる容器(2L以上のサイズのもの)、布巾、ボウル2個【仕込み工程】
❶ 梅を水でしっかり洗い、ザルにあげておく。(青梅は2〜3時間水につけてアク抜きを行ってもよい)
❷ 一粒ずつ布巾で優しく水分を拭き取る。
❸ 爪楊枝で梅のヘタを取り除く。
❹ ボウルに、焼酎50ml、塩100gをそれぞれ入れる。
❺ 片手で梅を焼酎にくぐらせた後、反対の手で塩をまぶして一粒ずつ容器へ入れる。
❻ すべての梅を容器に入れたら、残りの塩50gで蓋をする。
❼ 翌日には梅から梅酢が出てくるので、天日干しまでの約1ヶ月間、毎日容器を振って、梅酢をまんべんなく行き渡らせる。
土用の天日干しで
梅のうまみを凝縮
梅雨が明けた7月下旬、晴天が三日三晩続く頃を見計らい、天日干しを行います。竹ザルに並べて日差しが当たる風通しの良い所へ。

まんべんなく干し上がったら、すべて容器に戻して保管。冬頃に味見をして塩気がまろやかになっていたら完成です。じっくり寝かせることで深みが増していくので、好みの食べ頃を見つけましょう。

- 梅の干し方
-
【用意するもの】
竹ザルなど広く干せるもの
【天日干し工程】
❶ 竹ザルに梅を取り出し、ひとつひとつ重ならないように並べる。梅酢も瓶ごと日当たりの良い場所へ置く。
❷ 天日に三日三晩干す。梅は上下を何度かひっくり返す。
❸ 容器に戻して、好みの食べ頃になるまで保管。11月〜12月頃には塩がまろやかになる。
※ 干す場所が屋外にない場合は、容器ごと天日が当たる場所に置く。
酸味と塩気を活かした
梅干し料理
定松さんは塩代わりに梅干しをフル活用。酸味がきいた料理は特にこの時期ぴったり。
まずは梅干しそのものを使ったレシピです。
もずくと梅干しのスープ
丸ごと1個で簡単スープ作り。もずくと梅干しの上に和風だしを注ぐだけ。

- 作り方
-
【材料(2人分)】
梅干し2粒、もずく2パック、水400ml、茅乃舎だし1袋、薄口醤油小さじ3、酒小さじ2
※梅干しの塩分量によって、薄口醤油の量は調整【作り方】
❶ 鍋に水とだしパック1袋を入れて火にかけ、沸騰したら2〜3分煮出して、パックを取り出す。
❷ 洗って水気をきったもずくを器に入れる。
❸ もずくの上に梅干しを一粒ずつのせる。
❹ ❶のスープを❸の上から注ぐ。
梅肉とらっきょうの
たたききゅうり

続いて、定松さん宅で定番の調味料「梅味噌」の作り方と、その活用レシピを教わりました。
梅味噌
梅肉と味噌を混ぜ合わせるだけ。爽やかな酸味とコクで、素材の美味しさを引き立てます。

- 作り方
-
【材料】
梅干し(梅肉)と味噌を1対1の分量で用意
【作り方】
❶ 梅干しの身をほぐして、種を取り除く。身は包丁で軽く叩いてペースト状に。
❷ ❶の梅肉と味噌を1対1の割合で混ぜ合わせる。
いわしの梅味噌巻き
梅味噌を塗った大葉をいわしでくるんで焼いた一品。白身魚や鶏のむね肉を使っても。

- 作り方
-
【材料(2人分)】
いわし3尾、梅味噌大さじ1、大葉3枚
【作り方】
❶ いわしは3枚におろす。
❷ 半分に切った大葉に梅味噌を薄く塗る。
❸ いわしの上に❷の大葉をのせて巻き、爪楊枝をさして留める。
❹ フライパンにオリーブオイルをひいて、中火で焼く。
豚バラ肉の梅味噌焼き
梅味噌を甘酒でのばして、豚バラ肉に漬け込んで焼くだけ。肉の甘みが際立ちます。

- 作り方
-
【材料(2人分)】
豚バラ肉250g、梅味噌大さじ1、甘酒(またはみりん)大さじ1、玉ねぎ中玉半分、大葉5枚
【作り方】
❶ 梅味噌に甘酒を加えてのばす。
❷ 豚バラ肉のスライスに❶を塗ってもみ込み、30分漬け込む。
❸ 玉ねぎを薄切りにして皿に盛る。(スライスしたものを30分以上空気に触れさせておくと辛味がなくなる)
❹ 大葉を千切りにする。
❺ フライパンで❷を焼く。
❻ ❸の玉ねぎの上に❺を盛り、❹の大葉をちらす。
梅肉を用意した際に残った種も活用しましょう。
梅干しの種で大根煮

梅干しの副産物「梅酢」は
万能な調味料

梅酢でにんじんラペ

季節の仕込みで
食卓が豊かに
「梅はその日の難逃れ」と言われるように、古くから疲れが溜まった時や食欲不振の際に重宝されてきました。梅干しや梅酢は調味料にもなり、自分で漬ければ活躍の場も増えそうです。
梅雨が来たら、梅仕込み。この習慣で料理の幅も広がります。仕上がりを待つ時間も楽しい季節の仕込み仕事、始めてみませんか?


定松 千歌さん
THIS DESIGN(株)でコーディネーター・編集・プランナーなどを行う一方、さまざまな視点から「食べること」への認識を肥やす情報誌「PERMANENT」を発行し、ワークショップも開催。また茅乃舎 リバレイン店にて仕込み仕事の教室を担当する。
文/生野朋子 写真/定松伸治