茅葺きの家、スローフード、そして、かつて見たホタルが舞う場所、農業……。まるでジグソーパズルのピースのように全部がピタッとハマり、河邉の頭の中に、茅葺き屋根の料理店の確たるイメージが生まれました。
あれ、醬油屋はどうなった?
はい、ご説明しますね。
話は前後しますが、福岡は醬油産業が盛んな県。伝統もあります。しかしながら、ライフスタイルの変化とともに、醬油だけでは難しい時代にもなっていました。そこで、1980年には、醬油をベースにしたたれや調味料の開発に取り組みます。この研究開発が、のちの、調味料・食品会社としての味づくりの根幹になり、ものづくりの経験の蓄積となったのです。さらに、明太子製造にも取りかかり、1990年には博多からしめんたいこ〈椒房庵〉を立ち上げます。たれや調味料、明太子の成功も、料理店実現への大きな後押しになったことは間違いありません。
さぁ、では料理店に戻りましょう。思いはあっても、実際の形にするにはやはり苦労がありました。一番の苦労は料理人探し。しかし、これもいろいろな方の協力があって、やっと料理長が決まりました。名は岡部健二といいます。
岡部に託されたのはスローフードの精神。素材は極力地元産で、その時季ならではのものを厳選。素材が主役の料理であること。調味料はこだわりのものを……などなど。
岡部に託されたのはスローフードの精神。素材は極力地元産で、その時季ならではのものを厳選。素材が主役の料理であること。調味料はこだわりのものを……などなど。そして、もっとも大事なのが食文化の継承でした。頼みとなったのは、〝長野おばあちゃん〟の存在でした。福岡県飯塚市で農業を営む長野さんは、地域に伝わる食材や調理法を受け継ぎ、次世代へ伝える活動をされていました。「こういう人から勉強させてもらわんといかん」と感銘を受けた河邉は、社員を通わせました。そのひとり、教えを乞うた岡部は、リスペクトを込め、〈御料理 茅乃舎〉のコースの中に、「路代おばあちゃんの逸品」という一品を入れることにしたのです。
周囲の様々な協力を得ながら、岡部の全集中、怒濤の日々は続きます。河邉の要求は厳しく、味に一切の妥協なし。河邉はスープが好きだったので、おいしいスープ、それも農の力を感じるような野菜のスープを作ってほしいと岡部に頼みます。何度も何度もダメ出しされながら、必死の思いで完成させたのが、スープ「大地の恵」でした。そして、岡部渾身のスペシャリテ、穀物の香り、穀物のコクを食べていただきたいと「十穀鍋」も完成を見ます。
こうして2005年、食文化と伝統文化を体験してほしい、そして素敵だと感じてもらいたい、という願いが込められた茅葺き屋根の料理店、〈御料理 茅乃舎〉が開業となりました。ますます、日本の伝統的食文化の大事さを痛感した河邉、いよいよ新しい段階に入っていきます。
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