私たちが“一生もののレシピ”と呼ぶのは、一度覚えたら、これから先、ずっとつくりつづけたいレシピのことです。
そんなレシピを、ひとつ、ふたつと増やすことができたなら、
しあわせな時間もまた、ひとつ、ふたつと増えていくような、うきうきした気持ちになります。
いつでも、どんなときも、間違いない味に仕上げられて、
これならと自信をもってお出しできるレシピ。
本連載では、できる限り
・材料をシンプルに
・だしと基本調味料を使う
・日本料理の基本の調理法を取り入れること
を考えたレシピをご紹介します。
冬は、“豚の角煮”を選びました。
かたまり肉を使うため、てまひまかかる料理だと思われがちですが、実は、あまり手をかけることなく“時間”がおいしく仕上げてくれる料理です。
角煮は、ご馳走感もたっぷり。家族が集まる特別な日や友人を招く日など、“おもてなし料理”としても一役買ってくれます。
かたまり肉をしっとり柔らかく仕上げるのが「豚の角煮」の見せどころ。めずらしい調理法ですが、大根の力を借りて、お肉を下処理する方法でご紹介します。
今回は、茅乃舎だしを使って、和風仕立てに。甘辛く濃い味というよりも、あっさりとおいしい角煮です。
角煮で大切なのは、お肉をほろほろっと柔らかく仕上げること。パサっと固くならないようにお肉をコントロールすることが大事です。また、ほどよい脂加減に仕上げたいですね。
大根おろしを使うことで、お肉は柔らかく、余分な脂を抜いた角煮ができます。この方法を用いることで、はじめてつくる方でも失敗がありません。
今回は、上品な角煮を目指して、つくってみましょう。
豚の角煮の手順を大きく捉えると、下記の3工程になります。
前日に30分、当日に2時間あればつくれます。
といっても、手をかけるのは、ほんの少しの時間。鍋を火にかけている時間のほとんどは、ほかのお料理や支度ができます。
茹ですぎてお肉がパサパサになってしまう、煮汁に脂が浮くほどギトギトになる、そんな失敗が多いお料理かもしれません。
だからこそ、大根おろしを使ってみてほしいと思います。煮た後に余分な脂を取る手間もなく、仕上がりの脂っぽさを気にすることもなくなります。
豚の角煮のつくり方
詳しいレシピはこちらを押す
豚の角煮のつくり方
[材料](4人分)
[つくり方]
茹でたほうれん草や辛子を添えてお召し上がりください。
豚肉を大根おろしに一晩つけて寝かせることで、大根に含まれる酵素がお肉を柔らかくしてくれます。さらに、豚肉の持つ独特なクセまでおさえてくれます。
たっぷりの大根で、お肉を覆うようにし、ラップをして冷蔵庫で一晩寝かせます。
大根おろしは、豚肉600~700gに対して、 1/2本が目安です。
煮込みものをする冬は、大根の旬。おおきな大根もリーズナブルに手に入りやすい季節です。冬ならば、下拵えに大胆に使っても、気が引けないと思います。
大根は表面をよく洗えば、皮ごとおろして大丈夫です。
たっぷりの水が入ったお鍋に、豚肉を入れ、大根のおろし汁も、全て入れていきます。
豚肉の量に関係なく、1時間30分が茹で時間の目安。
大根おろしは、灰汁を取る役目まで果たしてくれて、本当に優秀です。しばらくは、このままお鍋にお任せで大丈夫です。
茹であがりです。豚肉は、くったりするほどとっても柔らかくなり、ぷるんぷるん。
肉質もしっとり、ツヤツヤです。
水を入れたボウルに、豚肉を入れて大根おろしを洗い流します。
そして、お好みの大きさに切りましょう。ちょっと大きめにすると、かたまり肉ならではのよさが出ますね。
長時間煮込んで、味を染み込ませる料理だと思われがちですが、時間をかけて茹でた豚肉なら煮込む時間は20~30分。余分な脂分が外に出ているため、短くても、しっかりと調味料の味を吸収することができるのです。
味つけも、だしを生かして。
和食の定説通り、砂糖から順に調味料を入れていくことで、しっかりとお肉に味をつけていきましょう。
だしに、砂糖大さじ4、酒大さじ2を入れます。豚肉に甘みが染み入れば、醤油大さじ3を入れて、落とし蓋をし、煮汁が半分になるくらいまで中火で煮ます。
途中で、豚肉をひっくり返しながら全面に味を染み込ませます。
(レシピは、上部の「豚の角煮のつくり方」を押してください。)
驚くほどしっとりと柔らかく、さっぱりした味わいの角煮は、冬のおもてなし料理にもぴったり。煮る時に、生姜やニンニクを入れると、また違う味わいを楽しめます。
これからの季節、みなさまの食卓で活躍してくれたら幸いです。
ガタガタと揺れて、おろすのが大変な大根おろし。バットの下に濡れた布巾を敷くことで、バットが動かなくなり、安定感が増します。また、丸みのあるボウルなどの容器でなく、安定する平なバッドなどを使って固定すると、ラクにおろせます。大根を持つ手だけを動かすようにしましょう。
角煮に添える和からしも、ちょっとしたコツで香り高く仕上げることができます。和からしの粉を水で溶いたら、揮発性を持つ辛み成分がなくなってしまわないよう、容器を逆さまにして、しばらく置いたままにしましょう。からしの風味がいっそう高くなりますよ。
繰り返しつくる和食、次回は、「だし巻き玉子」をご紹介します。
日本料理への造詣が深い山田洋子さんにレシピをつくっていただきました。
「豚の角煮は、『東坡肉(トンポウロウ)』と呼ばれる中華料理が日本に伝わり、和食として親しまれるようになったそうです。お肉の脂身を美味しくいただくお料理ですが、大根を使うことでさっぱりいただける和食らしい角煮になります。冷蔵庫で寝かせるだけ、茹でるだけ、煮るだけのお料理なので、失敗することなくおいしい角煮をつくることができますよ」
フードスタイリスト
山田洋子(やまだようこ)さん
茅乃舎の季刊誌「てまひま」でも活躍中。江戸懐石近茶流 教授の資格を保有し、日本料理の技術や作法など裏打ちされた料理の知識と技を持ち合わせながら、和食をはじめとしたご家庭でもつくりやすいレシピを提案。料理のうつくしさと、繊細な味つけに定評がある。
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私も、大好きな豚の角煮。つくれるようになると、人を招くときにとっても心強いレシピです。大根を使う方法、ぜひお試しいただきたいです。
編集部