いつでも、どんなときも、間違いない味に仕上げられて、これならと自信をもってお出しできる。そんな料理を私たちは“一生もののレシピ”と呼んでいます。
まず身につけたいのは、誰もが好きで、人生の中でも何度も食卓に登場する基本の和食。
本連載では、できる限り
・材料をシンプルに
・だしと基本調味料を使う
・日本料理の基本の調理法に取り入れる
を考えて仕上げたレシピです。
秋は、“かぼちゃの煮物”を選びました。
どうしてでしょう、実家のごはんやおばあちゃんとの思い出がよみがえる方も多いはず。
それほど昔から親しまれてきた秋と冬の定番おかず。
今回は、そのかぼちゃの煮物を、上手につくれるようになりましょう。
今回は、茅乃舎だしのレシピで紹介しています。
昔からかぼちゃは、いりこと一緒に炊かれてきました。ですので、煮干しだしでつくるのも、もちろんおすすめです。
茅乃舎だしなら上品に、煮干しだしなら田舎らしい味わいに仕上がります。
お好みの味を探してみてください。
かぼちゃの煮物は、かぼちゃに煮汁をたっぷりと含ませてつくるお料理。
ほくほくっと仕上げるにも、柔らかく仕上げるにも、大切なのは水分量です。
かぼちゃの煮物の手順を大きく捉えると、下記の2工程になります。
1、下処理
2、煮る
1、かぼちゃの量と水分量を正確に計り、少ない煮汁で煮る
2、短い時間で、強めの火で煮る
かぼちゃの炊き方は、ほっくりも柔らかくも、お好み次第。
ですが、かぼちゃの実が、べちゃっと煮崩れてしまうことは避けたいですね。
べちゃっとなるのは、水分量が多いことが原因です。
これからお伝えする水分量を参考にしてくださいね。
今回は、ほくっと仕上げる煮方をお伝えしています。
かぼちゃの煮物のつくり方
詳しいレシピはこちらを押す
かぼちゃの煮物のつくり方
[材料](2人分)
[つくり方]
かぼちゃのわたは、煮汁を汚し、味の染み込みを邪魔します。ですので、スプーンを使って、わたは、丁寧に取り除きましょう。シンプルな料理だからこそ余計に、このようなちいさな気配りが料理のおいしさに繋がっていきます。皮が厚い部分は面取りもしましょう。(かぼちゃを保存する場合も、わたをとって保存すると傷みにくくなります)
かぼちゃの煮物は、最初にかぼちゃの量と水分量をきちんと決めること。途中で足し水などはせずに、決めた量で煮ていくことが大事です。
なぜなら、かぼちゃは、どんどんと水分を吸っていく食材だから。例えば大根なら、いくら煮汁が多くても、吸い込まれる水分量は決まっていますが、かぼちゃはそうはいきません。水分量が多ければ水分をたくさん含み、べちゃっとやわやわになってしまいます。なので、あらかじめ水分量を決めておきます。
今回は、この比率をしっかりと覚えてほしいと思います。
かぼちゃ300g:水(だし汁)350ml。
この比率のポイントは、少ない煮汁で煮るということです。
かぼちゃは重ならないように、皮を下にして、鍋に並べます。かぼちゃが水に浸るくらいが理想です。実を最初に下にするとべちゃっとなってしまいます。鍋の大きさも適したものを選ぶようにしましょう。あまり大きな鍋だと、煮るときにかぼちゃが踊ってしまい、煮崩れの原因になります。
茅乃舎だしのだし汁で煮た後、
味つけは、砂糖大さじ1と1/2と、うす口醤油小さじ2。
和食の定説通りに、砂糖から入れることを忘れずに。
泡がしっかりとたつくらいに、強めの中火で火にかけてください。
4分ほど煮て、甘みを全体に馴染ませてから、醤油を加えましょう。
(レシピは、上部の「かぼちゃの煮物のつくり方」を押してください。)
煮物といっても、かぼちゃは、“ことこと煮る料理ではない”のです。
強めの火加減で、短い時間で煮ます。
意外に感じるかもしれませんが、煮る時間は、じつは、10分ちょっと。
これが、ほくっと仕上げる秘訣なのです。
芋類を煮る時は、かるめでやさしい紙蓋を使いましょう。
竹串がすっと通れば、中まで火が通っている証拠。それを確認できたら、かぼちゃをひっくり返して仕上げます。煮汁は、少し残っているくらいです。
最後に、てりだしのみりんを加えましょう。みりんを早めに入れすぎると、煮崩れの原因になりますので、仕上げのタイミングで。
幼い頃につくってもらった記憶がよみがえる、かぼちゃの煮物。
この味もまた、みなさまのご家庭で、思い出の味となれたらうれしいです。
今ではかぼちゃと言えば、西洋かぼちゃを示すことが一般的になりましたが、日本伝統のかぼちゃがあることをご存知でしょうか。「黒皮かぼちゃ」です。
ごつごつとした見た目で、実がやわらかいのが特徴。
西洋かぼちゃはことこと煮ないとお伝えしましたが、黒皮かぼちゃは“気づかれないほどに、ことこと煮る”食材です。きめ細やかなので、しっとりと上品に炊きあげます。
また、煮る前に、“蒸しておく”ことも必要。せっかくのかぼちゃの回ですので、日本古来のかぼちゃを使った、煮物の作り方もご紹介しておきましょう。
黒皮かぼちゃの煮物のつくり方
詳しいレシピはこちらを押す
黒皮かぼちゃの煮物のつくり方
[材料](2人分)
[つくり方]
繰り返しつくる和食、次回は、「豚の角煮」をご紹介します。
「お料理は、ていねいにつくるとそれに応えてくれます。おいしい料理をつくるため、丁寧な工程でつくってみましょう。料理をうつくしく、おいしく仕上げるために重要なのは、仕上げの前段階にあります。かぼちゃの煮物で大事なのは、水分量と火加減。少なめの煮汁でやや強火で短時間で煮るのが特徴です。ほくほくと艶やかに仕上げましょう」
フードスタイリスト
山田洋子(やまだようこ)さん
茅乃舎の季刊誌「てまひま」でも活躍中。江戸懐石近茶流 教授の資格を保有し、日本料理の技術や作法など裏打ちされた料理の知識と技を持ち合わせながら、和食をはじめとしたご家庭でもつくりやすいレシピを提案。料理のうつくしさと、繊細な味つけに定評がある。
この記事がおもしろいと思ったら、いいねを押してください。
編集部が喜びます!
①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪⑫⑬⑭⑮⑯⑰⑱⑲⑳㉑㉒㉓㉔㉕㉖㉗㉘㉙㉚㉛㉜㉝㉞㉟㊱㊲㊳㊴㊵㊶㊷㊸㊹㊺㊻㊼㊽㊾㊿
折々の会とは
日本の食文化ならではの「知恵」を、日々の暮らしで実践していくための、
久原本家のポイント会員様向けサービスです。ご入会は以下よりお進みください。
キーワードをご入力ください
かぼちゃは、水分を吸っていく食材。面白いですね。こういうちょっとした知識があるだけで、料理のときに気にかけることが変わりそうですね。
編集部