料理をつくるたびに、レシピを検索するわたし。
以前つくった料理をまたつくろうと思ったら、スマホを手にとりまたレシピを調べ直す。
一度つくった料理が自分の中に、なかなか蓄積されず、料理をする度にいつも初心者に戻ってしまう。その時々で、仕上がりにブレがある。
いつでも、どんなときも、間違いない味に仕上げられて、これならと自信をもってお出しできる。そんな料理をしっかりと身につけることができたなら。
私たちはそれを、“一生もののレシピ”と名付けたいと思います。
一度覚えたら、これから先、ずっとつくりつづけたいレシピ。
まず身につけたいのは、誰もが好きで、人生の中でも何度も食卓に登場する基本の和食。
それを、茅乃舎だしでつくってみます。
本連載では、できる限り
・材料をシンプルに
・だしと基本調味料を使う
・日本料理の基本の調理法に取り入れる
を考えて仕上げたレシピです。
シンプルでもこんなに味わい深い料理に仕上がるのかと、和食の美味しさを見直すきっかけにもしていただけると思います。料理を美味しくするちょっとした和食のコツや、豆知識もお伝えします。知っておくと、他の料理でも応用ができる料理の知識として蓄えていただけます。
一生もののレシピを、あなたの頭の中に、手の中に。
そもそも「茄子の揚げ浸し」とは、どんなお料理でしょうか。
とろっとろの茄子の身と、茄子からじゅわっと溢れ出るおだし。その味わいを楽しめるのが、「茄子の揚げ浸し」というお料理です。
つゆは、ごくごくと飲み干せるくらいに味つけすると、とても気品ある一品になります。
また、美しい“茄子紺”を引き出すのも、茄子料理で大切なこと。
この美味しさを目指して、茄子の揚げ浸しをつくってみましょう。
茄子の揚げ浸しの手順を、大きく捉えると下記の3工程になります。
①揚げる
②浸す
③冷ます
美味しさを一番左右するのは、茄子の揚げ方でしょう。
ここで、茄子のとろとろ感、油の吸い方、つゆの含み方、茄子の色合いが決まります。
茄子の焼き浸しという料理もありますが、焼く場合は茄子の食感を楽しみ、揚げる場合はとろとろ感を楽しみます。ですので、揚げ浸しなら、いかにこの“とろとろ感”を引き出すかが重要です。また、揚げるという作業は、茄子のアクを処理したり、色味を止めるという役割も果たします。
茄子が油を吸いすぎて、ぎとっと油っぽい仕上がりになること。
揚げ加減をしっかりと見極めることで、揚げすぎや油っぽさを回避できます。
茄子の揚げ浸しのつくり方
詳しいレシピはこちらを押す
茄子の揚げ浸しのつくり方
[材料](2〜3人分)
[つくり方]
※お好みで、おろし大根やかぼすを添えてお楽しみください。
揚げ浸しは、茄子の切り方でも、仕上がりの味を選ぶことができます。なぜなら、果肉の部分の面積が油を吸う面になるからです。
今回は、茄子を縦半分に切る方法でご紹介します。
うまみを感じられる油含みができ、何よりどなたでも上手に揚げることができます。切れ目は、深すぎない程度に2〜3mmくらいで包丁を入れていきます。
よりあっさりと仕上げたい場合の切り方は、記事の下部でご紹介します。果肉の断面を狭くする切り方ですが、切り方や揚げ方など少し難易度が上がるでしょう。
揚げる、その前に。
茄子料理は、色よく仕上げる=茄子紺に仕上げる、ことも美味しさの秘訣だとお伝えしました。色よく仕上げるには、どうしたらいいのでしょうか?
①アクを処理する
茄子のアクが色を悪くするのです。ですので、アクの処理が大切になります。アクを処理する方法は、水にさらすか、油で揚げるか。今回は、揚げることで、アクを処理しています。そのため、茄子を水にさらす必要はありません。また、空気に触れることで茄子の色が落ちていきますので、“茄子を切っておいておく”ことは避けましょう。
②皮目から揚げる
油に入れる時は、必ず、皮目から揚げること。ここで、茄子の皮を色止めし、きれいな紺色を引き出します。
先ほど、覚えましたね。
揚げ時間は、170度で、皮目から1分
です。170度とは、高温で揚げる、という意味です。
揚げ時間は悩みどころですね。これは数字で覚えるのが一番でしょう。
高温でさっと揚げることで、色止めもよくなります。
1分経ったら裏返して、果肉の断面部分を揚げます。
揚げあがりの目安は、箸のへこみ加減
茄子をお箸で挟んだ時に、身の部分がぎゅっと形がへこんだら、油をちょうどよく吸っていますので、もう大丈夫です。断面の揚げ色は目安にせずに、箸のへこみ方で測りましょう。
油きりは、鍋の油の上ですることで、しっかり落ちます。
だし1袋、水400ml、うす口醤油大さじ2、みりん大さじ2、砂糖大さじ1。
それだけです。じゅわっとだしを感じる分量にしています。調味料を入れる順番は問いません。
(レシピは、上部の「茄子の揚げ浸しのつくり方」を押してください。)
どちらも熱々のうちに、合わせましょう。つけ汁の熱で、茄子の火の通りを少し進ませます。
茄子の量とつけ汁の比率は、細かく考える必要はありません。“だいたい”で考えてもらって大丈夫です。
粗熱がとれたら、冷蔵庫で2〜3時間冷やして味を含ませます。
茄子のとろみ、美しい紫色の茄子紺、じゅわっと溢れるおだし。
この仕上がりができれば、成功です。まずはこの基本を、しっかりと身につけましょう。
かぼちゃ、ピーマン、ししとうなどの野菜と一緒につくってもいいでしょう。
茄子が実れば、揚げ浸し。とせがまれるほど、夏に欠かせない我が家の味になることを願っています。
油を吸う断面を狭くすることで、よりあっさり仕上げられます。
切れ目の入れ方や揚げ方など、少し難易度が上がります。
茄子の上下を切り落とし、3等分くらいで輪切りにします。転がしながら、切れ目を入れます。
転がしながら、油で揚げます。揚げ加減は、基本と同じく、箸のへこみ方を目安にしてください。
繰り返しつくりたい一生ものの和食、次回は、ほくほくっと仕上げる「かぼちゃの煮物」をご紹介します。
「お料理は、ていねいにつくるとそれに応えてくれます。美味しい料理をつくるため、丁寧な工程でつくってみましょう。料理をうつくしく、美味しく仕上げるために重要なのは、仕上げの前段階にあります。茄子も揚げ方のコツを知れば、色よく仕上がり、切り方次第でとろりとした食感が楽しめますよ」
フードスタイリスト
山田洋子(やまだようこ)さん
茅乃舎の季刊誌「てまひま」でも活躍中。江戸懐石近茶流 教授の資格を保有し、日本料理の技術や作法など裏打ちされた料理の知識と技を持ち合わせながら、和食をはじめとしたご家庭でもつくりやすいレシピを提案。料理のうつくしさと、繊細な味つけに定評がある。
この記事がおもしろいと思ったら、いいねを押してください。
編集部が喜びます!
①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪⑫⑬⑭⑮⑯⑰⑱⑲⑳㉑㉒㉓㉔㉕㉖㉗㉘㉙㉚㉛㉜㉝㉞㉟㊱㊲㊳㊴㊵㊶㊷㊸㊹㊺㊻㊼㊽㊾㊿
折々の会とは
日本の食文化ならではの「知恵」を、日々の暮らしで実践していくための、
久原本家のポイント会員様向けサービスです。ご入会は以下よりお進みください。
キーワードをご入力ください
一番好きな野菜が、茄子です。茄子の実のとろとろした味わいは、とても幸せになります。
編集部