「こうしなきゃ、こうじゃなきゃ」と思いわずらうことなく「こうしたほうが、私は気持ちよくつくれる。わたし好みの味になる」という心持ちで、もっと楽しく料理と向き合えたらいい。
料理家の広沢京子さんと私たちが、そんな思いをあなたに届けたくて始まった連載「気持ちのいい調理のひみつ」。今回のテーマは、寒くなるにつれて恋しくなる「煮込む」です。
「『煮込む』って言ってもいろいろあるから。ポトフのつくり方を基本に、どうしたいのかを一緒に考えながら、自分に合う調理法を見つけていきましょう」
はい。先生、お願いします!
「ポトフのような長い時間煮込む料理の場合、野菜は大きく切ってごろっとさせると、煮崩れしなくていいですね」
玉ねぎは4分の1、人参は縦に半分、じゃが芋は皮を剥いてまるごと、そのまま。
「にんにくは半分に切って芽を取りのぞき、包丁で押さえて潰すと煮崩れていきます」
これに対して、さっと短時間で煮たいときは、野菜も薄く切ると素早く火が通ります。「ピーラーを使うと、スッスッと気持ちよくスライスできますよ」
長時間煮込むことを前提とするなら、脂身の多い肩ロースやバラなどのブロック肉がおすすめ。「ヒレ肉は煮込みすぎるとパサパサになってしまうので、使いたいなら短めに煮込むほうがいいかもですね」
塩胡椒で下味を付けるのもお忘れなく。
「ポトフを煮込むとき、鍋は厚めのほうがじんわりと火が通るのでよいと思います。あと早く煮込みたいなら、圧力鍋を使うのもいいですよね」
さらに、たいせつにしたいポイントは、「ふた」。
「しっかりとふたを閉めると、素材の味がぎゅっと閉じ込められる分、肉のくさみもこもりがち。蒸し煮にしたい場合にはいいのですが、私は最近、オーブン用シートで落とし蓋をしてから、重いふたを少しずらして煮込むようにしています。そのほうが味がクリアになるので、好きなんですよね」
ちなみにオーブン用シートは、鍋の大きさに切る必要はとくにないとか。「要するに水分が飛ばないように、表面にひたひたにさせればいいだけなので」
一方、さっと煮たい場合、鍋は軽めの片手鍋でOK。
「こっちは、ふたもしなくてだいじょうぶ。道具も扱いやすく、気軽につくれるのがさっと煮のいいところです」
その日に食べ切れず、次の日に煮込みなおしたいとき、ありますよね。
「カレーとかだとルーが固まっている場合もあるので水や牛乳を入れますが、ポトフのあたためなおしはそこまで『水をたくさん足さなきゃ』と思わなくてもいいかも。ただ汁気が少ない場合、味が濃くなったり焦げたりするので、少しだけ水をいれる感じでいいと思います」
[材料](4人分)
人参
1・1/2本
じゃが芋
4個
玉ねぎ
1個
豚肩ロース肉(塊肉)
300g
塩
小さじ1
胡椒
少々
クローブ
4粒
水
1L
2袋
塩
小さじ1/2
粒マスタード
適宜
にんにく
1・1/2かけ
[つくり方]
[材料](2人分)
[つくり方]
「まず大事なのは、酒とみりん、醤油を入れて一度煮切ること。だいたい失敗しがちなのは、酒くさくなることなので。アルコール分をちゃんと飛ばすのを心がけてください」
さらなるポイントは、煮汁をどうするか?
「ここは好みが分かれるところ。照り煮のようにこってり仕上げたい人は、水の量を少なく。魚は薄めの切り身を用意して、落とし蓋をすれば大丈夫です」
さらに頭の部分を使った兜煮の場合「水は少し多めにしてもいいですね」
ただ焦げ付かないよう火は弱くし、適宜煮汁をかけながら、徐々に煮詰めていくのが、てりっとおいしく煮あげるポイントだそう。
まさに魚に限らず、すべてを「煮る」ときに言えること。
「レシピの分量にとらわれず、素材の大きさやかたちをよく見て。仕上げたいイメージを思い浮かべながら、気持ちよくつくりましょうね」
そう、まさに気持ちのいい笑顔で教えてくれるのでした。
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お魚を煮るときの煮切るポイントや煮込み料理によって野菜の切り方を変えるなど、今回は「煮込む」をテーマに、たくさんのくふうを教えていただきました。
勝部