夏を涼しく、5つのくふうとさっぱり麺

「答えは、一個じゃないものばかりなんです」

料理家として、レシピ開発をしたり、撮影やイベント料理をつくったり、だけでなく。福岡・薬院にあるアトリエ「kichi」では、料理教室を開催。さまざまな人たちに料理を教えている広沢京子さん。

「よく『これで合ってますか?』と聞かれることがあるのですが、合ってる合ってないは、基本ないんですね。すべてはケース・バイ・ケースで、こっちでもいいし、あっちでもいいし」

ただ、ひとつ考えて欲しいのは『なぜこうするのか』に思いを凝らすこと。

「理由はわからないけど、レシピにそうあるからじゃなく。まずなんでかを知った上で、自分にとって、どっちのほうが気持ちいいかな?で、選べるといいですよね」

本連載企画、題して「広沢京子さんに学ぶ、気持ちよい調理のひみつ」。初回に続き、2回目のテーマは、夏の今知りたい!冷たい料理をおいしく、気持ちよくつくるくふうあれこれ。広沢さん特製のさっぱり冷麺をつくる工程を例にとりながら、教えていただきます。

いつものように、本コラムと、インスタライブの両方でお届けしますよ。

くふう①ちゃんと冷たい水でさらす

まずは生野菜。みずみずしくてシャキシャキッとしたものを夏にいただくと、なおのこと美味しく感じますよね。

その際「水でしばらくさらしておく」とはよく言われていますが、ここにポイントが。「冬はふつうに水道水でいいと思うんですけど、夏はぬるいことも多いので、できれば氷水につけておくと気持ちいい、よりシャキッとした食感になります」

ただし長い間さらしていると、栄養分が流れ出てしまう恐れもあるとか。「なので見ながら、触りながら、頃合いを見てざるにあげてください。そうだなぁ、だいたい数分くらいかな?」

くふう②しっかり水気を切る

家庭でつくる冷たい麺でなりがちなのは「味がぼやけてしまう」こと。原因は「水気」にあるようです。

「そういう場合、たいてい水切りが甘いんだと思います。素材の水気、麺を茹でたあとの水気、それらがちゃんと切れていないと、たれをかけてもうすく水っぽくなって、うまみや味をちゃんと感じないことが多いんです」

なので大切なのは水にさらしたあと、しっかり水気を切ること。

「サラダスピナーでもいいし、ない方はざるにあげたあと、こんなふうにペーパーでふいてあげてください」

また、麺ものもしかり。

ゆがいて氷水でつけたあと、ざるにあげてチャッチャッと水気を切るだけじゃなくて「押さえながらしぼる」までを、ひとつの流れに。

あなたが今想像しているより、もっと力強く、ぎゅっとね、と広沢さん。

「こうした小さな作業を怠らないだけで、ずいぶんと味は変わります。めんどくさい、と言う人もいますけど、実はやってみると、そんなに時間も手間もかからない。この工程を省くためにどうするか?なんて考えるうちに、水気は切れますから(笑)」

はい、先生。以後、わきまえます!

くふう③いろいろ酸味を足す

「うだるような暑さだと食欲もあまり湧かないし、つくるのもおっくうになりません?そんな時、私は梅干しとか、梅酢とか、レモンとかを常備しておいて、積極的に取り入れているようにしてます。酸味の刺激で食欲も湧きますし、クエン酸は、夏に足りなくなりがちな鉄分も補ってくれるみたいです」

ピンポーン!梅干しを包丁でたたく際の「気持ちのいいくふう」が、オーブンシートを敷くこと。まな板に梅肉がつかず、後の作業も断然ラク。ペティナイフでトントントン、と軽快にたたくと、スマートでスムーズです。

くふう④たっぷり薬味を使う


大葉に香菜にネギ……無類の薬味好きの広沢さんはたっぷり、何種類も使います。「あの独特の香りと味わいは、気持ちがシャキッとします。ベランダでもいいので、好きなものを自分で育てると、使う時に好きなだけとれるし、経済的でもありますよね」と教えてくれました。

くふう⑤キンキンに器を冷やす

グラスやガラスの器など。あらかじめ冷蔵庫に入れて冷やしておくことで、料理を盛って食卓に並べた際、冷たさをキープすることができます。

そして何よりもこの霜が入ったルックスよ!

見るからに涼しそうで、食べる人への「おもてなし感」が湧きますよね。

そんな5つのポイントを押さえながら、チャレンジして欲しいのはこちら。

夏を涼しく、
豚しゃぶとシャキシャキ野菜のさっぱり麺

[材料](2人分)

素麺

2束

500ml

煎り酒

大さじ1・1/2

小さじ2

梅干し

1個

豚バラ薄切り肉(しゃぶしゃぶ用)

30g

水菜

1株(40g)

トマト

1/2個

紫玉ねぎ

1/4個

青しそ

2枚

青ねぎ

2本

オクラ

2本

香菜

2株

おろし生姜

小さじ2

煎り白ごま

大さじ1

ごま油

少々

[つくり方]

  1. 鍋に茅乃舎だし、水を加え中火で煮る。沸騰したら弱火にして、2~3分煮出す。だしパックを取り出し、氷水に当てて冷ます。
  2. 梅干しは種を外し、包丁で細かく叩く。①に加え、酢、煎り酒を加え混ぜ合わせ、冷蔵庫で冷やしておく。
  3. 水菜は3cm長さに切り、氷水にさらしてザルにあげ、ペーパータオルで水気をふく。トマトは1cm角に切る。紫玉ねぎは薄切り、青しそは千切りにしそれぞれ水にさらし、ペーパータオルで水気を切る。青ねぎは小口に切り、香菜は葉を摘んで、茎は細かく刻む。オクラは塩(分量外)を少々まぶし、まな板の上で転がして板ずりし、薄切りにする。
  4. 小鍋に湯を沸かし、豚肉をさっと茹で、氷水にとりザルにあげ、ペーパータオルで水気をふき、細かく刻む。
  5. 鍋に湯を沸かし、沸騰したら素麺を入れ、袋の表示通りに茹でる。
  6. ザルにあげ冷水で洗い、さらにザルにあげて手でギュッと押さえながら水気をしっかり切る。
  7. 冷蔵庫で冷やしておいた器に素麺を盛り、豚肉、トマト、水菜、香菜の葉、オクラ、紫玉ねぎをのせ、②の冷やしておいただし汁を注ぐ。仕上げにごま油を少々たらす。薬味(青ねぎ、青しそ、香菜の茎、生姜、ごま)を器に盛り、添える。

お客さまからのご質問が多いのが、冷たいだし汁のこと。

「めんつゆを使ってももちろんいいけど、だしをとって氷水に当てて冷やすと、風味も、味わいもけっこう違いますね」

「だから夏は何かと氷を使うので、製氷皿を多めに用意して、氷をたっぷりストックしておくといいですよ。と言いつつ、使うスピードの方が早くなったり、冷凍庫のスペースの問題もあるしね……。製氷機は夏の一番ほしい物となりますね〜」


と、氷の心配までしてくれる、“気持ちのいいお世話焼き”の広沢さんなのでした。

インスタライブでは今回ご紹介した“豚しゃぶとシャキシャキ野菜のさっぱり麺”のレシピを通して、冷たい料理をおいしく、気持ちよくつくるくふうを教えていただきます。
みなさんも広沢さんへ質問したいこと、ぜひ教えてください。

開催日時
2023年7月27日(木)18:30~
茅乃舎公式インスタグラム(@kayanoya.official)にて

※いつもの開催曜日と時間が異なります。お時間のご都合が合えばぜひご視聴ください。
アーカイブでもライブ後配信予定です。

茅乃舎だしのご購入はこちら
https://www.kubara.jp/kayanoya/dashi/

煎り酒のご購入はこちら
https://www.kubara.jp/kayanoya/seasoning/irizake/

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