きらくに発酵教室②知ってるつもり?の塩麹づくり

10年ほど前に起きた塩麹ブーム、覚えていますか?

あれから、なんとなく知ったような気でいるけれど、いざ手にすると「どう使えばいいのだろう」。

「塩麹といっても難しく考えず、塩の代わりにふだんのお料理に使ってください。塩味の“カド”がとれて、まろやかな味に仕上がります」

そう教えてくださるのは、兵庫県たつの市で発酵料理教室「発酵LabCoo(ラボクー)」を営む松下さんご夫妻。ここで、改めて質問。塩麹って、そもそもなんですか?

松下美幸さん(写真左。以下、美幸さん)

塩麹は、塩と麹と水を混ぜ合わせたもの。とろりとなめらかな舌触りが特徴で、麹特有のうまみをたっぷり含んでいます。

松下裕昭さん(写真右。以下、裕昭さん)

いわゆる“甘酒”に塩を加えたものですので、厳密には“発酵”ではなく、その前の段階にあたる“糖化”です。ただ塩は酵素の働きをおさえるので、甘酒ほど甘くはなく、まろやかさが残ります。また塩が入ることで、保存性も高まるんです。

塩麹を「自分で作る」とよい理由


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食材に漬け込むと柔らかくなると言いますが、その理由はなんですか?

裕昭さん

麹に含まれる酵素の働きですね。麹菌自体が“プロテアーゼ”というタンパク質をたくさん出すのですが、食材の持つタンパク質と合わせることで、筋繊維がほぐれて、柔らかくなります。

美幸さん

漬け込むのは「ひと晩」とよく言われていますが、個人的な感覚ですと、2〜3日漬け込んだほうが、よりおいしくなる。肉質が変わって、しっとりするんです。

裕昭さん

ただし、スーパーなどで市販されている塩麹は、加熱処理などで酵素の働きが期待できないことが多いんですね。

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なるほど、だからこそ自分で作ったほうがよい?

美幸さん

それにコストがかからず、つくり方もかんたん。冷蔵庫に入れて半年は持ちますので、ぜひつくって、お塩の代わりに普段から使ってみてください。それでも「使いきれない」となったら試して欲しいのが、ごはんを炊く時。

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えっ!炊飯に塩麹を入れるんですか?

美幸さん

ごはんに塩気が含まれるだけでなく、少しもっちりとした食感になります。そのままおにぎりにしてもいいですし、旬の素材を一緒に入れると、かんたんに炊き込みごはんもできますよ。

俄然、意欲が湧いてきたところで、つくり方へとまいりましょう。

酵素たっぷり、うまみもたっぷり
塩麹のつくり方

① 乾燥した板状の麹200gをボウルに入れ、香りがふわっと香るまで手で揉みほぐします。最初からバラの場合、この工程は必要ありません。

② 塩70gを加え、全体になじませます。

塩はふだん料理で使っているものでOK。

③ さらに水を加えてなじませます

④ 容器に移し、1日1回かきまぜて常温で1~2週間寝かせます。

密閉容器でなくてもよいですが、空気をふくませ、カビの繁殖を防ぐためにも1日に1回はかき混ぜてください。
粒を手でつまみ、かんたんにつぶれたらできあがりの合図。冷蔵庫で保存を。

「漬け込まない」塩麹+だしで、使い道をもっと。

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さっそくできた塩麹を使いこなしたいのですが、まずは何がよいでしょうか。

美幸さん

どんな食材にも合わせられますが、とくに効果が実感できるのが鶏肉です。たんぱく質の分解がより活発になり、うまみが増します。今日は肉を「漬け込む」ことにこだわらず使っていただきたいので、「漬け込まない」レシピをご紹介します。塩麹を加えることで味に深みが増します。

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その場合のポイントは何ですか?

美幸さん

今回の発見は、だしと塩麹の相性がいいこと。とくに茅乃舎さんの「やさしい和漢だし」は、どんぴしゃでした。薬膳っぽい香りもありながらそこまで強くなく、複雑で滋味深い味わいになる。体もポカポカになりますので、ぜひ冬の季節に試してみてください。

滋味深く、あたたまる
塩麹の参鶏湯


[材料](4人分)

骨付き鶏もも肉

2本(なければ手羽元 8本)

長ねぎ(青い部分)

1本分

長ねぎ(白い部分)

1/3本分

生姜

1片

にんにく

1片

800ml

もち米

大さじ山盛り3

塩麹

大さじ3

なつめ(あれば)

6粒

松の実

10g

[つくり方]

  1. 長ねぎの白い部分は斜めに薄切りに、生姜とにんにくは薄切りにする。
  2. 鍋に長ねぎの白い部分以外、全ての材料を入れて中火にかける。
  3. 沸騰したら蓋をし、時々かき混ぜながら弱火で1時間煮込む。
  4. 長ねぎの青い部分を取り出す。塩味が足りなければ、塩麹(分量外)で味を調える。
  5. 長ねぎの白い部分の薄切りを散らしていただく。
麹特有のつぶつぶが苦手な場合、ペースト状にして使うのもおすすめ。

美幸さん

次は、パーティーメニューを意識した「海老の塩麹トマトクリームパスタ」をご紹介します。もともと、トマトと塩って相性がいいんですね。甘みが引き出されるので。

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確かに、生のトマトに塩をかけて食べるとおいしくなりますもんね。

美幸さん

またトマトの酸味消しにお砂糖を入れるレシピもありますが、塩麹だと甘みも十分にあるので、特有の酸味が立ってこないんです。さらに野菜だしが加わることで、複雑なおいしさになるんです。そのまま煮込み料理としてもよいですが、相性がよく、より汎用性のあるパスタ料理に仕上げました。

“ちょうどいい”まろやかさ
海老の塩麹トマトクリームパスタ

[材料](2人分)

好みのパスタ

160g

殻付き海老(ブラックタイガーなど)

8~10 尾

薄力粉

大さじ2

玉ねぎ

1/2 個

にんにく

1片

オリーブ油

大さじ1

塩麹

大さじ2

白ワイン(なければ酒)

大さじ2

トマト水煮缶

1缶(400g)

生クリーム

100ml

胡椒

適量

イタリアンパセリ

適量

[つくり方]

  1. 海老の殻をむき、尾と背わたを取り、薄力粉をまぶす。玉ねぎとにんにくはみじん切りにする。
  2. フライパンにオリーブ油を入れ、弱火でにんにくを炒める。香りが出たら玉ねぎを加え炒め、透明感が出てきたら海老を加える。中火で海老の色が変わるまで炒める。(玉ねぎが焦げないように気をつける)
  3. 塩麹、白ワイン、トマト水煮缶、袋を破った野菜だしを加える。4~5分ほど中火のままで煮詰める。生クリームを加えてさらに煮る。
  4. パスタを袋の表示通りに茹で、器に盛る。③をかけ、胡椒、イタリアンパセリで仕上げる。
だしの袋を破って入れる時は、湿気て粉が出づらい時があるので、容器にあらかじめ移しておくとなおよし。

おまけ:発酵LabCooの冬だより


冬と言えばチョコレート。このもととなるカカオも、実は発酵食品なんですよね。そこで“ダブル発酵”の甘酒ショコラを考案しました。
作り方は、型にクッキングシートを敷き、刻んだダークチョコ100gと甘酒30mlを湯せんにかけて溶かし、型に流し込んで、冷蔵庫で冷やすだけ。お好きな大きさに切り分けてめしあがってください。

本当にかんたんに、とろりとした生チョコ感覚のおいしさになりますよ。


発酵LabCoo
味噌や糀、醤油など醸造文化が残る兵庫県たつの市。ここで、各家庭で簡単に発酵食品が作れるようなワークショップや甘酒教室、オリジナル醤油作りなどのイベントも数多く開催しています。多くの人が日本の伝統食品の味や歴史に親しみ、各家庭で発酵食品を手作りし、地域の味を引き継いでいただきたいと願っています。

やさしい和漢だしのご購入はこちら
https://www.kubara.jp/kayanoya/all_dashi/wakandashi/584500/

野菜だしのご購入はこちら
https://www.kubara.jp/kayanoya/all_dashi/yasaidashi/

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